SCIENCE CREATES THE FUTURE
SCIENCE CREATES THE FUTURE
関東学院大学では、企業や自治体、地域社会など、社会と深く関わり合いながら目の前にある課題と向き合い、
解決をめざす「社会連携教育」を推進しています。理系3学部間で連携した分野横断・分野融合の学びだけでなく、
総合大学の強みを生かした文理融合の学びにも取り組むことができます。
Point1
理工学部7コース、情報学部、建築・環境学部それぞれが、PBL(Project-Based-Learning)や企業・地域との連携を通じ、学生が実社会の課題解決に取り組む場を提供。Society 5.0やグリーントランスフォーメーション(GX)といった未来社会の課題を見据えた教育を展開。学生が新たな技術を創造・活用する力を養い、総合的な視点で持続可能な社会の構築に貢献できる人材を育成します。
Point2
文理を問わず全学部でデータサイエンス、ICTスキル、情報学の基礎を学修できる情報教育を展開。情報学部の副専攻(情報工学、数理・人工知能、情報メディア、医療・人間情報学)も履修可能に。総合大学としての強みを最大限に活かし、全学部に学びの広がりを持たせ、IT、ICTを活用し幅広い社会課題に対応できるSociety5.0時代の人材を育成します。
K-tech−Society5.0を見据えたGX・DXを中心とする
地域や企業の課題を解決するために、デジタル技術や環境技術を活用し、学生主体で取り組むプロジェクトです。
さまざまな分野の課題に立ち向かい探究を続ける、関東学院大学の先生方の最先端の研究を紹介します。
人工知能やデータ解析技術を活用し、社会や産業に新たな価値をもたらすとともに、効率化や最適化を推進する学問領域。
ITやデータ活用により、医療の高度化や健康管理の効率化を図り、個人や社会全体のヘルスケアの質を向上させることを目的とする学問領域。
環境保護や資源の持続的活用を通じ、社会や経済の発展と自然との共生を両立し、持続可能な未来の実現を目指す学問領域。
サイバー攻撃や情報漏洩のリスクを防ぎ、安全で信頼性の高い情報社会を構築するために、技術的対策や運用管理を研究する学問領域。
地震や台風などの自然災害から人々を守るために、防災・減災技術を開発し、強靭で持続可能な都市や社会基盤を設計する学問領域。
都市や地域の魅力や機能を向上させるために、環境・社会・経済のバランスを考慮しながら、快適で活気ある空間を創出する学問領域。
生命の仕組みを分子・細胞レベルで解明し、その知見を医療や食糧生産、環境保護など幅広い分野に応用することを目指す学問領域。
電子機器の基盤となる半導体技術や新素材の研究開発を行い、情報通信やエネルギー分野などの技術革新を支える重要な学問領域。
地球温暖化の抑制や脱炭素社会の実現を目指し、再生可能エネルギーの活用やCO2排出削減技術の開発、政策の研究を行う学問領域。
宇宙の構造や天体の運動を解明し、ロケットや人工衛星の技術を発展させるとともに、惑星探査や宇宙開発の可能性を探る学問領域。
2026年4月、
理系学部が3学部に再編!
建築・環境学科
「建築・環境学」を土台に、
3年次から5つの
コースに分かれて専門分野を学びます。
理学系分野と工学系分野を揃えた7コースを設置。各コースでの専門的な学びに加え、コースの枠を超えた横断的な共同研究や発表会を通じた学生同士の交流も盛んです。
微生物学や細胞生物学、生態学など幅広い生命科学を学び、最新の遺伝子解析装置や質量分析機などを使った実験で実践力を養います。さらに、常に進化する生命科学に対応するために、自ら課題解決できる力やコミュニケーション力を重視。薬・医・農・環境など多彩な業界で活躍できるエキスパートを育成します。
暮らしを支える先端技術は、物理学や数学などの基礎科学の成果により発展しています。本コースでは、数理・物理学を学びながら現代との結びつきを理解し、答えのない問題にも挑む力を育てます。さらに、教員免許取得支援や人間力を高める学びも充実。社会の多様な分野で活躍できる分析力や思考力を身につけます。
応用化学は、宇宙船やスマートフォンの材料、化粧品、医薬品の開発など、化学の力で未来を創り出す学問です。今後もエネルギーや環境問題の解決に向けた重要な役割となります。本コースでは、講義や実験を通じて化学的思考と技術を実践的に学び、倫理観と社会的責任を持つ技術者、研究者、教育者を育成します。
1962年、本学は世界で初めてプラスチックめっきの工業化に成功しました。材料の表面に機能を付加する表面工学は、自動車や精密機器、医療・バイオ分野にも応用され、5G通信や自動運転など今後の社会を支える重要な技術です。本コースでは、産官学連携の実績と歴史を活かし、即戦力となる人材を養成します。
機械工学は、日常生活から宇宙分野までの課題に挑む学問です。本コースでは、材料力学や熱力学などの基礎学習に加え、興味・関心に応じて学べる総合機械、自動車、ロボティクスの3専攻を開設。少人数のプロジェクト型学修や学外コンテストを通じて、創造力と実践力を育み、未来を支えるエンジニアを育成します。
ものづくりの基盤となるエネルギーシステム、ナノ電子デバイス、ITシステム、通信システムの4分野を踏まえ、ハードもソフトも理解できるエンジニアを養成。大学院進学も視野に入れた高度な専門科目や、電気主任技術者の資格取得に必要な科目も設置し、次世代を担う若き技術者・研究者の育成を目指します。
地震や台風などの災害から人命と都市を守る技術、耐震性の高い地盤や構造物を作る技術を実践的に修得します。持続可能で質の高い生活を支えるために、地球規模の視点で環境に配慮した「まちづくり」を目指し、ハードとソフト両面の視点も学修。「大切な人を守りたい」という想いを実現できるエンジニアを育てます。
AIやビッグデータ、IoT、デジタルヘルスケアを学び、進化するIT分野で新たな価値を創造できる人材を育成。入学前の「コース選択ガイダンス」を経てから入学するので目指す方向に合わせた柔軟な進路選択が可能です。
情報工学、プログラミングを体系的に学び、実験・実習を通じて課題解決能力を高めます。科学的思考力と実践的技術力を備え、ICTの専門性と協調性を活かしながら、社会課題と向き合える技術者を養成します。
数理科学やAI技術を基礎から学び、機械学習、データサイエンスなどを活用して現実の課題に取り組みます。論理的思考力と分析力を養い、ロボット制御などへの応用を通じて、変化に対応できる技術者を養成します。
メディア工学を基盤に、Webデザインや映像制作、XR、生成AIなどの最新技術を体験。社会連携教育を通じて、技術力と創造力を融合させ、社会に新たな価値を創出するクリエイティブな技術者を養成します。
医療や福祉分野に関連するICT技術とバイオデータ解析の理論を学び、デジタルヘルスケアやリハビリテーション科学を基盤にした実践力を修得します。健康管理や高齢者支援の分野で活躍できる医工連携技術者を養成します。
1~2年次はワークショップや建築設計製図を中心に基礎知識を修得。3年次より興味・関心や将来像に合わせてコースを選択、専門分野を集中的に学びます。
社会からの要求に対し、デザインという作業を通して、具体的なかたちを答えとして導き出すのが「建築家」の仕事です。人間生活の場としての建築の可能性を探る実践型カリキュラムに挑戦し、幅広く柔軟な発想や、自分なりの問題意識、理想の空間をつくるための技術・方法論を身につけます。
良好な都市環境を創出・再生するために、住民との対話と協働を進めるコミュニティデザインや既存建造物の再生・利活用、自然と人工物を調和させながら空間を創造するランドスケープデザインなどを学びます。これらを通して、総合的な視点から地域社会を活性化させるための理論や方法を考えます。
誰にとっても最も親しい日常の生活環境である住空間がテーマです。普段の生活の体験を見直して、快適さや使いやすさの本当の意味を考え、生活や環境の変化にも応じることができる、理想的な「すまい」のあり方を追究します。そして、人々のくらしの場を、快適に、豊かにする方法を身につけます。
これからの時代は、地球環境に優しいエコロジーな建築を創造することが大切です。空気・熱・光・音・水などの生活に必要な環境要素を調整するための原理や技術を学び、自然の風、太陽光などの自然エネルギーも建築に上手に取り入れて、環境に優しく、快適な建築デザインを目指します。
社会からの要求に対し、デザインという作業を通して、具体的なかたちを答えとして導き出すのが「建築家」の仕事です。実践型カリキュラムに挑戦し、幅広く柔軟な発想や、自分なりの問題意識、理想の空間をつくるための技術と方法論を身につけ、安全かつ長く使える建築物を追求します。
「建築・環境学」を土台に、3年次から5つのコースに分かれて専門分野を学びます。
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簡便なマイクロプラスチック検出方法の開発と適用
理工学部 応用化学コース 鎌田 素之先生
マイクロプラスチック(MPs:直径5 mm以下のプラスチックごみ)は地球温暖化と並ぶ重要な環境問題で、海や川などの水環境中を浮遊するMPsによる生態系への影響が指摘されてきました。これまでMPsの分析には多くの時間と労力を要していましたが、私たちは特殊な試薬を使ってMPsを光らせる手法を開発し、従前よりも簡便なMPs測定を実現しています。この手法で水環境以外のさまざまなモノを対象にMPsの生成について調べた結果、電気ケトル、ティーバッグ、食品容器、ミネラルウォーター、水道など、生活に身近な多くのモノからMPsが発生することがわかってきました。
電気ケトル、ティーバッグ、食品容器、ミネラルウォーター等については、これまで同様の研究が行われています。しかし、水道水のなかでも特に蛇口から供給されるお湯に大量のマイクロプラスチックが含まれることを明らかにした研究は、世界的に例がありません。
マイクロプラスチック(MPs)の生物への影響についてはまだ不明な点もあります。どんなプラスチック製品をどう使うとMPsがどの程度発生するか調査し明らかにできれば、MPs問題とどう向き合うべきかを提言できるでしょう。
電気自動車/ハイブリッド自動車用軸受の高性能化
理工学部 先進機械コース 宮永 宜典先生
電気自動車/ハイブリッド自動車にはモータが使用されています。モータへの依存度が大きくなるにつれ、モータの回転を支えている軸受では「電食」と呼ばれる特有の損傷が生じ、自動車の乗り心地や各種性能に悪影響をおよぼします。この研究では、電食のメカニズムを追究するとともに、軸受の材質、潤滑油、表面コーティングなど多方面からのアプローチで電食防止技術の確立を目指しています。
今、自動車の電動化に注目が集まり、その技術革新が喫緊の課題になっています。技術革新の行方は電食への対策にかかっているといえます。近い将来、航空機などほかの機械でも電動化が視野に入ってくるはずですが、そこでも必ず電食の問題が立ちはだかってくるでしょう。
電食は雷のようなもので、発生予測が非常に難しい現象です。新規材料や表面コーティング技術を利用した防止策の確立も大切ですが、私たちは潤滑油メーカーと共同で既存のシステムの中で電食を防ぐ技術革新に取り組んでいます。
軸受内部でのグリース流れの可視化
理工学部 先進機械コース 宮永 宜典先生
機械の回転を支える軸受にはグリースと呼ばれるペースト状の潤滑剤が用いられますが、その流れは水などの液体と異なり非常に複雑です。本研究では、グリースの中に極めて微細な粒子を混ぜ、その動きをハイスピードカメラで追跡することでグリースの流れを明らかにします。そしてグリースの種類による流れの違いを見出し、その違いが機械の性能とどう関係しているかを調べていきます。
軸受内部でのグリースの流れを再現しながら評価する方法は、私たちの特許技術です。この方法を用いてグリースの流れと機械性能との関連性を明らかにすることは、機械設計に新しい視点を提供することになり、ひいては機械の高性能化につながります。
石油メーカーとともにグリースの開発を進め、機械の高性能化に寄与する製品を生み出したいと考えています。
表面テクスチャによるスマート軸受の実現
理工学部 先進機械コース 宮永 宜典先生
機械の回転を支える軸受の表面に溝やくぼみをつけてポンプ機能を付与し、性能を維持したまま、使用する潤滑油の量を必要最小限に抑えることを目指しています。軸受自らが潤滑油の使用量を決めることから「スマート軸受」と呼んでいます。溝やくぼみの配置にはAI技術を応用し、性能向上を試みています。
スマート軸受はこれまで実現されておらず、AIなどの最新技術を組み合わせて開発を進めています。また、油だけでなく空気潤滑にも応用できるため、医療機器や食品機械など油との相性が悪い機械への応用も可能です。
溝やディンプル(くぼみ)などによるポンピング効果の評価、溝やディンプルを付与することによる軸受性能の評価などを行うとともに、企業と共同でロケット用燃料ポンプやハンディ掃除機への応用を目指しています。
埋め込み型人工心臓に関する研究
理工学部 先進機械コース 宮永 宜典先生
左心室補助を目的とした埋め込み型人工心臓は、心臓移植までの橋渡しとしても患者のQOL(Quality of Life:生活の質)改善に貢献しています。しかし、大きさの制限から女性や子どもへの適用が難しいという現状があります。そこで本研究では、人工心臓の性能を維持したまま損失をできる限り抑え、小型化につなげることを目指しています。
女性や子どもにも選択できる小型人工心臓は、未だ実用段階に至っておらず、医療現場で切望されています。
女性や子どもにも適用可能な大きさの人工心臓とするために、機械損失を小さく抑え、バッテリーの小型化に取り組んでいきます。
数値計算による恒星と銀河の進化過程の解明
理工学部 数理・物理コース 古澤 峻先生
コンピュータの中で宇宙や星を構築し、物理法則に基づき起こり得る現象を予測して「恒星や銀河の進化」の解明を目指しています。近年、大質量星超新星爆発が重力波と呼ばれる波動現象やニュートリノ(電気を帯びていない小さな素粒子)の放出源として、また高密度・高温状態の物理を検証する場として重要視されています。この爆発のメカニズムの解明や観測予測のため、スーパーコンピュータによる超新星爆発の数値計算を行っています。さらに銀河の構造や進化、および未知の物質であるダークマターの構造や進化への理解を深めるため、銀河に関する数値シミュレーションにも取り組んでいます。
さまざまな力が関わって起こる複雑な超新星爆発について、世界最高クラスの数値シミュレーションを行っています。また超新星爆発の計算では、ニュートリノの放出、吸収、散乱の状況を各時刻、各場所で計算するため、最先端のスーパーコンピュータを活用しています。
超新星爆発は、スーパーコンピュータの発展などによりさらに現実的なシミュレーションが可能になりました。新たな観測データを得られれば、それに合致するシミュレーションの探索により超新星爆発への理解が深まるでしょう。
物理情報を組み込んだ深層学習による室内気流の予測
建築・環境学部 建築・環境学科 魏 誠浩先生
快適な室内熱環境と省エネルギーに配慮した建築・設備の設計においては、短時間で数多くの設計プランの気流環境を予測することが求められます。AIの手法の1つである「深層学習」では、既存データを学習して新しい設計プランの気流環境を予測できますが、従来の深層学習は物理現象を理解せずに教師データを模倣するのみで、予測結果と物理現象との乖離が懸念されます。本研究では、深層学習モデルに物理情報を組み込む手法を開発しています。
深層学習モデルに物理現象に関する知識を学習させることで、従来のデータ駆動型AIとは異なる最先端の「Physics-Informed AI」アプローチを高精度に実現します。
物理的に合理性を備えた室内気流環境を迅速に予測できるAI手法を構築することで、サスティナブルかつ快適な建築環境設計の考案を効率化できると考えています。
「車車間通信・測距統合システム」の研究
情報学部 情報学科 水井 潔先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
交通事故や渋滞がなく地域で暮らす人に優しい交通社会を目指して、クルマとクルマが通信し車間距離を測る「車車間通信・測距統合システム」の研究に取り組んでいます。本研究では、通信と距離計測(測距)を同時に行うオリジナルの方式を提案し、実社会における安全運転支援で役立てられないか検討しています。社会全体の高齢化が進むと誰もが被害者にも加害者にもなるリスクが高まるため、高精度の通信技術をベースとした自動運転技術を早期に社会実装したいと考えています。
車車間通信と車間距離測定を1つのシステムで同時に行い、安全運転支援に役立てる技術開発は先端的な研究テーマといえます。また本研究では、新たな情報通信手段として注目されている「可視光通信」の採用を検討しています。
今後は可視光車車間通信・測距統合システムの実現性や安全性を検証し、社会実装を目指します。そのためには社会認知を広め、他分野も含めた議論を深めていきます。
神経活動を制御または調整する「ニューロモジュレーション」の研究
情報学部 情報学科 簑 弘幸先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
脳神経系の疾病は、脳の神経細胞の活動に異常が生じることで引き起こされると考えられています。それらの異常な活動を、電気や磁気、超音波などの刺激を与えることで正常に戻す医療技術が、ニューロモジュレーションです。私たちは、神経回路網モデルを用いたコンピュータシミュレーションによって、最適な刺激波形を明らかにしていきます。
脳神経に刺激を与える方法にはよくわかっていない部分もあり、特に、パルス状の刺激波形の周期や振幅などの特徴量をどうすれば最適に設定できるかは知られていません。私たちが取り組んでいるテーマはニューロモジュレーション分野における最先端の研究課題といえます。
患者の症状は必ずしも一定ではなく時間とともに変動しており、その時どきの症状に合わせた刺激波形を適切に決める必要があります。私たちは強化学習を用いて、非定常的な症状に追従する最適な刺激波形の決定を目指していきます。
植物由来原料からの新規バイオベースポリマーの合成
理工学部 応用化学コース 香西 博明先生
地球温暖化や石油資源の枯渇といった環境問題の観点から、研究開発においても再生可能資源に基づく循環型社会の形成に向けた取り組みが重要になってきています。私たちは、天然に豊富に存在する植物由来化合物からモノマー(プラスチックの最小単位)を合成し、これまで培ってきた高分子反応に関する知見を活かしながら新たなバイオベースポリマー(生物由来の原料で作られた製品)の開発に取り組んでいます。
環境問題が深刻化する中、使用後の分解まで見据えた環境にやさしい材料が求められています。植物由来の化合物を原料とするバイオベースポリマーの開発により、「化石資源由来原料の使用」と「自然への廃棄物の排出」をゼロに近づけることを目指して研究を進めています。
植物由来の特殊な構造を活かした高性能で高機能なバイオベースポリマーの設計を目標としています。さらに使用後は容易に分解されて原料に戻り、リサイクルできる新しい環境配慮型材料(サステナブル素材)を目指します。
創薬化学(新しい薬を開発するための研究)
理工学部 応用化学コース 山平 多恵子先生
創薬化学では、薬として効果を発現する化合物を合成し、新たな薬剤を創り出すための研究を行います。当研究室では、薬剤の候補となり得る化合物の化学合成に取り組み、将来的に病気の治療に役立つ研究成果を得ることを目標としています。
さまざまな病気に対して高い治療効果が期待される医薬品の開発が進んでいますが、治療が困難な病気はまだ数多くあります。本研究は、世の中にまだない新たな薬の創出につながるという意味で先端的といえます。
本研究では、疾病に関わる特定の酵素のはたらきを阻害する薬剤候補化合物の合成に取り組んでいます。これにより、がんやアルツハイマー病などの治療薬開発に寄与することを目指しています。
バイオマス材料を用いた環境にもやさしい化粧品開発
理工学部 応用化学コース 中山 良一先生
化粧品開発には、油と水のように互いに混ざり合わない2つの液体から均一に分散した「エマルション」をつくるため、界面活性剤を使用することが多いです。界面活性剤は種類が豊富で、容易にエマルションを作成できるきわめて有用な物質ですが、高濃度で配合すると使用時の感触を損なうこともあり、また油の性質によっては使用する界面活性剤の種類を変えなければならないなど、多くの制約があります。そこで本研究では、界面活性剤ではなくバイオマス材料(動植物から得られる再生可能な有機資源材料)をナノメートルサイズまで微細化したナノファイバーを用いた新しい化粧品の開発に取り組んでいます。
植物細胞の主成分であるセルロースは、地球上に最も多く存在するバイオマス資源です。セルロースを微細化したナノメートルサイズの「セルロースナノファイバー」には増粘効果や微粒子分散機能があり、化粧品・医薬品分野での活用が期待されています。
従来の界面活性剤ではなく、環境にもやさしいセルロースナノファイバーが油滴に吸着することで形成されるエマルションを、新しい化粧品開発に活用していくことを目指しています。
金属酸化物の層間反応場を利用した機能性物質の開発
理工学部 応用化学コース 友野 和哲先生
エネルギー貯蔵や再生可能エネルギーの普及には、安価で高性能な蓄電技術や電極材料の開発が不可欠です。私たちは、酸化剤や乾電池などに使用される層状マンガン酸化物(MnO2)を基盤として、その層間に可視光に応答する性質がある金属錯体(金属と非金属の原子が結合した化合物)や凝集性をもつアルキルアンモニウムイオンを挿入し、協奏的に機能性を向上させる研究に取り組んでいます。これにより高容量キャパシタ(蓄電や放電が可能な電子部品の一種)材料の設計、新規イオン電池の高効率電極材料の開発、水を電気分解して水素を発生させる水素発生電極触媒の高性能化、水系物質からの高イオン選択性をもつ吸着剤の開発などの技術革新を目指します。
本研究は、機能性物質を層間にもつ層状マンガン酸化物の構造をナノレベルで制御し、機能性を自在に調整できる点が最先端といえます。従来の材料より高い電気化学性能と環境適応性を実現し、エネルギー・環境の両面で持続可能な技術革新を推進しています。
将来的に環境負荷の低いエネルギー貯蔵技術や環境浄化技術を実用化することを念頭にメカニズムを解明し、持続可能なエネルギー技術の確立、炭素循環社会・環境保全の実現に貢献したいと考えています。
AIによる建築環境の予測・設計と建築設備の最適運用
建築・環境学部 建築・環境学科 遠藤 智行先生
快適性に大きく影響する室内の温度や気流・明るさなどの環境要素を考慮し、空調・照明などの設備の設計、運用を担うのが建築環境設備分野です。近年はAIによる自然換気設計手法や室内気流分布・快適性の予測、気象庁の観測地点データを活用した観測所のない地点の微気象予測などに取り組んでいます。また、空調設備が適切に稼働しているか、目標とする室内環境が実現できているかをAIに監視させ、適切な運用や故障・異常の検知、耐用年数の予測などにつなげる研究も開始しています。
これまでもコンピュータシミュレーションによる室内環境の予測、換気・空調システムの省エネ運用などが行われてきましたが、AI予測を取り入れた研究は国内でも少数です。特に生活空間の温度や気流分布など、建築環境での設計への応用に関わる研究は最先端といえます。
建築環境設計において、空調設備のみならず、給排水衛生設備や電気設備も含めた建築設備システム全般についてAIを活用した最適運用を進め、サステイナブルかつ快適な建築空間の設計・運用を実現することが目標です。
CO2で固化させる自然素材系建材に関する基礎的研究
建築・環境学部 建築・環境学科 藤沼 智洋先生
低炭素・脱炭素化社会で求められる建材の基礎研究として、CO2の固定化によりCO2排出量を抑制しつつ、強度発現・寸法安定性・その他の諸性能を有する「自然素材系建材(土や砂を中心とした素材の建材など)」に関する検討を行っています。
低炭素・脱炭素関連の建材開発の技術トレンドとしてコンクリートの研究事例が増えており、実際の適用事例も徐々に増加しています。その一方、環境に優しい「自然素材」を対象に低炭素・脱炭素技術と建築意匠の融合を目指す研究事例はまだ少数であるといえます。
CO2の積極的な活用が大前提となる時代を前に、自然素材の優しさを残しつつCO2をうまく取り込むことで、建材として必要な性能をより向上させられるような知見を見出していきたいと考えています。
災害時避難誘導支援アプリケーションの開発
情報学部 情報学科 永長 知孝先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
本研究では、ユーザ情報と避難所までの距離や高低差の情報を活用し、個々に合った避難先を即座に判断できる災害時避難誘導支援アプリケーションを開発しています。設定項目をもとに各避難場所に優先順位をつけ、適した避難先を判断するほか、先に避難した人の移動軌跡を記録してほかの避難者の携帯端末に表示し、通行可能な経路を視覚的に示します。Android スマートフォンで動作するクライアントアプリケーションで避難誘導動作をテストし、経路表示や移動軌跡の取得、表示、サーバへの保存機能が正常に動作することを確認しています。
このアプリケーションでは、ユーザ自身の健康情報、居住場所から避難所までの距離や高低差の情報などをもとに、すでに避難済みのユーザの避難経路情報を加味して適切な避難経路を提示できます。自然災害の脅威が増しているなか、人々の命を守る有意義な研究といえます。
実際の災害により近い状況を設定し、改めて評価実験を実施するとともに、モバイル通信を利用できない状況が生じた場合の対策についても検討を進めていく予定です。
ペットロボットによるロボットセラピー効果の向上
情報学部 情報学科 金田 徹先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
ペットロボットによるロボットセラピーには、不安やストレスの低減、コミュニケーションの改善などの効果が期待されます。当研究室では、ロボットセラピーの効果向上を目指して研究開発に取り組んでいます。
昨今、ロボットセラピーへの関心が高まっていますが、この分野の研究に取り組むグループはそれほど多くありません。ロボット制御や画像処理、AI応用など、複合的で先端的かつ高度な情報処理技術を駆使して、メンタルヘルスを求める社会的ニーズに応えていきます。
心と体のバランスを整えるヒーリング効果の検証方法の高精度化、画像処理およびAI処理の高速化などの課題を解決し、さらにクラウドを使用しないロボット制御の可能性を探っていきます。
診察情報を補う頚椎の長時間モニタリングシステム
情報学部 情報学科 金田 徹先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
整形外科疾患がある患者の治療やリハビリの経過を継続的に観察するモニタリングシステムの開発に取り組んでいます。診療時に得た情報に長時間のモニタリング記録が加われば、診断の精度向上が期待できます。
医療分野と機械・情報分野との協力により、フィジカルヘルス(人間の身体的健康)に貢献できます。最新の情報処理・信号処理技術を応用し、その成果を踏まえてウェアラブル超小型無線MARGセンサの開発につなげられると考えています。
現状では頭部の動きから7つの頚椎の動きを推測していますが、この妥当性を医師とともに検証し、必要に応じて改善を図ります。さらに、超長時間継続使用できて無線出力が可能な超小型MARGセンサの開発にも取り組む予定です。
製品技術文書情報/幾何特性仕様のISO規格/JIS開発
情報学部 情報学科 金田 徹先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
私たちの身の回りにある製品の多くは人工的に作られたものです。開発した製品を世に送り出すためには、製品設計(設計図面を製作する)の段階で各部品が意図に沿った機能を備え、かつ果たさなければなりません。またグローバル化が進み、環境への配慮が求められる現状では、技術者は世界共通の図面を表現する手法・言葉を理解する必要があります。私たちは世界共通の概念・手法・言葉を標準化しているISO(国際標準化機構)の規格開発に携わり、ものづくりの世界の現状を考慮しつつ、世界標準・日本標準(JIS)の開発を進めています。
グローバル化されたものづくりの現場では、国際標準の考え方や手法で設計結果を表現しなければなりませんが、日本はこの点で欧米に後れを取っている部分があります。その解決を図るべく、JISの改正・普及活動に取り組み、この活動をフィードバックして、より良い標準化について検討していきます。
欧米におけるものづくりの現状を踏まえ、日本のものづくりの現状を考慮しつつ、最適なJIS内容を提案するとともに、必要に応じてISO規格開発に反映できる研究活動を進めていきたいと考えています。
安心・安全なインターネット投票
情報学部 情報学科 塚田 恭章先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
国政選挙の投票がスマートフォンでできれば便利ですが、日本ではまだ実現していません。インターネット投票には高い安全性が求められ、以下のような条件を満たす必要があります。①適格性:有権者が一度しか投票できない。②公平性:途中経過が外部に漏れない。③匿名性:投票内容を他人に知られない。④検証可能性:投票が正しく集計されたか確認できる。⑤無証拠性:買収防止のため投票内容の証跡が残らない。これらを満たすシステム設計は容易ではありません。私たちは安全なインターネット投票の実現に向けた研究を進めています。
インターネット投票の安全性を数学的な観点から研究。数理論理学を応用した「形式手法」により、匿名性などの厳密な証明を行っています。コンピュータを使う形式手法は手作業より信頼性が高く、世界的にも注目され、多くの国や研究機関で活発に研究が進められています。
匿名性などの厳密な証明は、インターネット投票だけでなく、SNSやオンライン決済など、さまざまな情報システムにおいて重要な課題です。今後は形式手法を発展させ、多種多様な情報システムの安全性を検証することを目指します。
ブロックチェーン技術の応用
情報学部 情報学科 塚田 恭章先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
ブロックチェーン技術はデータの改ざんを防ぐ仕組みを持ち、「ブロック」と呼ばれるデータの塊を鎖(チェーン)のようにつなげた構造で過去のデータを書き換えにくくできるのが特徴です。取引情報をP2Pネットワーク(複数の端末がサーバを経由せずデータ共有できる技術)で共有すれば、特定の管理者なしに運用できます。この技術はデジタル通貨、著作権管理、サプライチェーン管理、NFT(代替不可能なデジタルデータ)などに応用されています。本研究室では学生がシミュレーターを開発し、ブロックチェーンの仕組みを直感的に理解できるようにしており、卒業研究ではブロックチェーンの新たな応用方法を探っています。
情報をブロックチェーンに保存し、暗号化して保護すれば改ざんは防げますが、そのままではデータ解析ができません。そこで注目されるのが、データを暗号化したまま解析できる秘密計算の技術です。秘密計算をブロックチェーン上で実行できる新しい手法を研究しています。
ブロックチェーンは従来の情報管理とは異なる新しい発想の技術です。今後は金融・医療・行政・物流などの各分野でどう活用できるか研究し、実社会への応用を探るとともに、より安全で便利な情報管理の仕組みを考えていきます。
拡散現象に関連する微分方程式と数理モデルの研究
理工学部 数理・物理コース 兼子 裕大先生
生物学に現れる個体群動態、生物の分化の過程、表皮の模様形成、感染症の流行、神経細胞間の伝達などの拡散現象を記述する数理モデルには、微分方程式の一種である「反応拡散方程式」が用いられています。この方程式は非線形であるため解析が難しく未解明な点が多く残されており、拡散現象に対するメカニズムの解明が困難な状況です。本研究では、数学的な観点から非線形解析学に現れるさまざまな手法を用いて反応拡散方程式を詳しく解析すること、適切な数理モデルを構築すること、シミュレーションによる予測や再現を行うことに取り組んでいます。
例えば生物の個体群動態を記述するには、生物種の移動によって生息領域も変化することを考慮する必要があります。私たちは、氷が水に溶ける過程を表す問題(ステファン問題)の定式化を応用し、外来種と在来種の生息領域の境界を水と氷の境界のように見なすことで、「自由境界問題」として新しく定式化しました。この問題を解くことによって、生物がどのように分布し、どのくらいの速度で、どのように広がっていくのかについて知ることができます。
生物種の侵入・拡散は外来種問題や生物多様性の観点から注目されています。数理モデルに対する理論的な解明が進み拡散メカニズムが明らかになれば、例えば、外来種がコンテナに紛れて外国から運ばれて来たとき、どうすれば侵入・拡大を防げるか、将来の生物分布を予測することができるか、などの課題について科学的知見を提供できるでしょう。
軽い原子核のクラスターガス的状態の構造研究など
理工学部 数理・物理コース 山田 泰一先生
原子核は私たちの物質世界を作り上げる基本的な構成要素です。本研究では、原子核の新しい形態として注目され、中性子星の表面にも存在すると考えられている軽い原子核のクラスターガス状態の構造を解明し、さらに、中性子星の構造と関連が深い無限核物質の状態方程式を第一原理から調べる新しい理論的方法の開発などを進めています。自然法則を表す数式を基に原子核の運動を記述する方程式を導き出し、コンピュータを駆使してこの方程式を数値解析し、実験データと比較・検討しながら原子核の謎を解き明かしていきます。
原子核のガス的クラスター状態の研究は注目度の高い最先端のテーマです。研究成果は国際的研究誌に掲載され、国内の学会誌でも引用・紹介されています。さらに、無限核物質を第一原理から解析する方法論についても新しい観点から開発に取り組み、成果を発表しています。
ガス的クラスター状態の確立に向けてさらに実験と理論の研究を進め、同時に謎の多い中性子星の研究への貢献を目指しています。一方、無限核物質の方法論の展開としては、未解決問題の解明に向けて研究を進展させる予定です。
宇宙における高エネルギー現象の解明に向けた研究
理工学部 数理・物理コース 中嶋 大先生
宇宙のさまざまな階層の天体を観測し、そこでの物理現象を解明します。観測対象は、中性子星あるいはブラックホールと恒星からなるエックス線連星系や、超新星残骸、銀河団など多岐にわたります。また、当研究室はエックス線撮像分光衛星XRISM(JAXA/NASAと協力して打ち上げ、現在は搭載カメラの軌道上運用責任者を務める)や、地球磁気圏X線撮像計画GEO-Xに搭載するCMOSカメラの開発にも携わっています。半導体センサ・信号処理回路の技術は、高精度の宇宙観測には必要不可欠であり、宇宙科学や宇宙開発に意欲を持った学生と一緒に取り組んでいます。
宇宙のサイクルは人類最大の難問で、それを観測し明らかにする研究は独創的で先端的といえます。宇宙観測に不可欠な高性能観測カメラの開発には先端技術を集結する必要があり、特に半導体センサについては企業と協働で新たな仕様を策定する中でさらに技術が磨かれます。
XRISM衛星の運用等は今後も本学学生とともに継続します。GEO-Xについては太陽活動が活発化している2020年代中に観測を実施予定です。半導体センサの仕様は現在企業とともに策定中で、2030年代の天文衛星搭載を目指しています。
味覚受容と環境適応/稀少動物繁殖のための雌雄鑑別
理工学部 生命科学コース 海老原 充先生
生物は環境から得られる食べ物に適応して味覚を変化させています。例えば、海棲生物は味覚を失うことで、海水が口腔内に流れ込んできても苦に感じなくなっているのです。環境と味覚受容の変化、そして進化について解析しています。また、近年動物園では稀少動物の保護・繁殖が使命となってきています。限られた空間と個体数で繁殖させるには、雌雄を鑑別しなければなりません。しかし鳥類の半数は見た目では鑑別できず、遺伝子レベルの解析が必要です。動物園と連携し、稀少動物の繁殖のための雌雄鑑別に取り組んでいます。
近年、動物種によって同じものを食べても同じ味として感じていないことがわかってきています。「なぜ草食・肉食・雑食なのか」を味覚受容の差から明らかにしようとしています。また、希少動物の保護・繁殖は動物園にとって今後ますます重要な役割になると考えられます。
動物園との共同研究を通して動物の味覚受容の差を遺伝子レベル・行動解析により明らかにし、環境適応と進化について解析していきます。また、希少動物の保護・繁殖に貢献できるよう雌雄鑑別技術のさらなる向上を目指します。
ゲノム編集で作物を改良するための標的遺伝子の探索
理工学部 生命科学コース 近藤 陽一先生
気候変動対策や持続可能な社会の実現には、作物の収穫量の継続的な増加が必要不可欠です。遺伝子組換えによる品種改良は収穫量を上げる方法の1つですが、遺伝子組換え作物は社会実装まで極端に時間がかかるのが現状です。そこで最近注目されているのがゲノム編集技術です。ゲノム編集により改良された作物は、日本でも市場流通前に問題がないか確認する必要はありますが、栽培には通常の圃場を使用することが認められています。ゲノム編集で作物を改良するには、改良の標的となる遺伝子を見つける必要があり、本研究では作物を用いずに標的遺伝子を探索する技術の開発に取り組んでいます。
本研究で開発中のシステムの最大の特徴は、ゼニゴケとシロイヌナズナという2つのモデル植物を利用して「作物を改良するための遺伝子を、作物を一切使わずに探索する」ことです。最先端の植物科学を適用できるモデル植物を使って、効率良く作物を改良するための遺伝子を探索できればと考えています。
標的遺伝子を実際に単離できるのか、モデル植物のゼニゴケを用いた遺伝子の探索に取り組み、今後さらに探索対象を広げていきます。また有望な標的遺伝子が見つかれば、イネ等の育種を行っている研究者との共同研究も検討しています。
微細藻類の特性を活かした気候変動対策とバイオ燃料開発
理工学部 生命科学コース 新家 弘也先生
微細藻類には光合成を通じて二酸化炭素を吸収し、バイオマスとして固定化する能力があり、温室効果ガスの削減に重要な役割を果たすことが期待できます。また、微細藻類の作る脂質は再生可能エネルギー源に変換できるバイオ燃料として、色素は機能性素材として期待されます。本研究では増産を目標に、微細藻類の一種のハプト藻を使い、温室効果ガス削減に向けた炭酸カルシウムの殻の合成機構解明、バイオ燃料としての利用に向けたアルケノン合成機構の解明、機能性素材としての利用に向けたエキネノン合成機構の解明に取り組んでいます。
放射線を利用した変異体作成が最先端といえます。私たちが行う実験進化手法では、放射線を定期的に照射しながら細胞を長期に植え継ぎ、遺伝子への突然変異の蓄積と有用種の選抜を繰り返すことで進化の過程を実験室で再現し、目的の形質を持つ細胞の創出を目指します。
実験進化手法は微細藻類では未確立ですが、確立できれば目的に合った微細藻類を人為的に創出可能となります。微生物や作物などにも広く活用できるため、育種(目的に合った生物の創出)のパラダイムシフトにつながるでしょう。
休眠状態の細胞を目覚めさせる研究
理工学部 生命科学コース 中西 秀樹先生
細胞は分裂・増殖するものというイメージがあると思いますが、実は地球上に存在する細胞、微生物のほとんどは増殖を止めた状態(休眠状態)で存在します。また、人に感染した微生物、さらにはがん細胞にも休眠状態の細胞があります。休眠状態の細胞は増殖中の細胞よりもしぶとく、厳しい環境でも生き残ることができます。この「しぶとい」休眠細胞はさまざまな病気において治療の妨げになることがわかっています。私たちは、休眠状態の細胞が目覚める過程について研究しています。
増殖中の細胞については盛んに研究されていますが、休眠状態の細胞に関しては明らかになっていないことが多くあります。私たちは、独自に単離した微生物(酵母)の変異体を使って、休眠細胞が覚醒するメカニズムを探っています。
「しぶとい」休眠細胞を覚醒させられれば病気の治療が容易になります。私たちの目標は、休眠細胞が覚醒するメカニズムを明らかにし、休眠状態を打破する方法を見出して感染症などの治療に役立てることです。
マイクロ波の医薬品や化粧品創製への活用
理工学部 生命科学コース 飯田 博一先生
電子レンジは、マイクロ波と呼ばれる電磁波によって、主に水分を振動させることで食品を温めています。このマイクロ波を医薬品や化粧品の創製に役立てるための研究に取り組んでいます。すでに、化粧品に使われている「トラネキサム酸」の短時間合成を、マイクロ波触媒を用いて開発済みです。また、人工光合成に用いられるルテニウム錯体や有機EL材料であるイリジウム錯体の短時間合成も、マイクロ波触媒を用いて達成しています。
電子レンジは食品加熱の技術ですが、これを有機化学の反応の熱触媒として用いると、通常の加熱法の数十倍も反応時間を短縮できたり、通常加熱とは全く違う化合物を合成できたりします。マイクロ波加熱は単なる加熱法ではなく、「マイクロ波熱触媒」なのです。
これまでは医薬品・化粧品の開発を主な目的としてきましたが、今後は化学材料の合成・販売にも研究を発展させていきたいと考えています。
月面基地でのロボットのダンスパフォーマンス創出
理工学部 先進機械コース 小松 督先生
アルテミス計画などにより、近い将来、人間の長期滞在惑星基地が運用されます。しかし、その空間は閉鎖的でストレスのたまりやすい環境です。そこで、国際宇宙ステーションでも効果が認められている「アミューズメントロボット」などのパートナーロボットを活用し、居住者の精神的健康を維持することが重要です。本研究ではアミューズメントロボットのダンスパフォーマンスを取り上げ、地球の1/6という低重力環境を利用してムーンウォークやランニングマンなどの高度なパフォーマンスを容易に実現するための制御技術の開発に取り組んでいます。
惑星基地で人々のストレスを緩和するロボットはまだ実現されていません。居住者の精神的健康管理に寄与するために、パートナーロボットを活用した月面でダンスパフォーマンスを容易に行える制御技術の研究を進めています。
すでに実験装置でムーンウォークの創出に成功しているため、今後はランニングマンなどより高度なテクニックの創出を目指していきます。
水素とバイオ燃料を混焼するDDFエンジンの実験的研究
理工学部 先進機械コース 武田 克彦先生
一般的な水素エンジンはガソリンエンジンと同じような仕組みですが、本研究ではディーゼルエンジンと同じような仕組みのエンジンを用います。これには燃費が良くなるなどのメリットがあります。さらに、バイオ燃料との混焼により「水素エンジン自動車は航続距離が短い」という課題もクリアでき、実用化に貢献できると考えています。
水素と軽油を混焼させるエンジンは研究例がありますが、水素とバイオ燃料を混焼させるエンジンは前例がなく、独創的な研究といえます。バイオ燃料はカーボンニュートラル燃料であり、カーボンフリーなエンジンを実現できます。
水素と空気の割合(水素当量比)、バイオ燃料との割合など、最適化を求める必要があります。また、排ガスの一部を給気に戻すEGRの割合(EGR率)と、EGR率によって変化する水素当量比の最適値についても明らかにしていきます。
自動車のLCA
(Life Cycle Assessment)研究
理工学部 先進機械コース 武田 克彦先生
LCA(Life Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法です。本研究では、いすゞ自動車株式会社と本学人間共生学部の佐野慶一郎先生との共同研究によって自動車のLCAを実施しています。
企業から自動車部品の質量や材質などの情報を入手し、エンジンの実燃費などを考慮したLCA計算手法を構築している点が独創的で最先端であるといえます。電気自動車とエンジン自動車、多様な代替燃料、燃料電池自動車と水素エンジン自動車など、LCAによって比較しています。
自動車の製造技術は進化を続けており、LCAも常にアップデートする必要があります。最新情報を取り入れながら、より正確なLCA計算手法を求めていきます。また、今後は合成燃料e-fuelの可能性を明らかにしたいと考えています。
転がり軸受の新素材と耐久試験
理工学部 先進機械コース 堀田 智哉先生
皆さんが普段乗っている自転車をはじめ、車のタイヤ、洗濯機、電車の車輪など、回転する部品をスムーズ動かすために不可欠な部品が「転がり軸受」です。古くから転がり軸受には鉄鋼が用いられていますが、時代の変化とともに機械が多様な環境や用途で用いられるようになり、それに合わせた素材選択が必要になってきています。本研究では、樹脂やセラミックなど新たな材料を転がり軸受に適応可能とすることを目的に、その寿命や損傷形態などを明らかにしていきます。
電気自動車や宇宙利用など、これまでとは異なる目的や用途で用いられる最先端の機器には、それに応じた性能を備えた部品が求められます。本研究は、こうした最先端の機器に必要な部品の開発を目的としています。
繊維強化プラスチック(FRP)や、従来に比べて安価なセラミック素材や加工法に着目し、より軽量でより長く使用できる転がり軸受の開発を目指していきます。
極小の世界で金属を操る―ミクロな世界のめっき反応
理工学部 先進機械コース 堀内 義夫先生
近年、スマートフォンに代表されるモバイル機器やIoTデバイスなどの高性能化・小型化が進んでいます。特に、機器の内部で使われる微細な配線や接点を正確に作るためには、金属を狙った場所に均一に形成する高度な加工技術が求められています。こうしたニーズに対応する無電解めっき法は、電気を使わずに化学反応によって金属を物の表面に析出させる技術で、電子部品の表面をコーティングしたり、電気信号を送る配線構造を形成する際に広く利用されています。従来の無電解めっき技術では、比較的広い面積(バルク領域)に対しては、金属を均一にめっきする技術が確立されていました。微細な面(マイクロ・サブマイクロメートルといった微細領域)においては、めっき皮膜をむらなく析出させることが困難になるという課題がありました。本研究では、微細領域における無電解めっき反応に着目し、詳細なメカニズムの解明を目指しています。
微細領域では界面での化学反応や拡散、電位分布などに特異性があり、従来の知識では説明できない現象が発生します。こうした現象をナノスケールで詳細に解析し、化学反応を捉えることは、基礎科学としての新しい発見と実用技術としての応用の両面で最先端といえます。
ナノスケール領域での精密なめっきプロセスの開発を展開します。例えば、微細な金属パターンを成長させることで、新型ディスプレイデバイスやセンサーの開発、さらには、半導体やIoTデバイスの小型化・高性能化にも貢献できます。
自動車の排ガス対策、環境改善のための浄化触媒
理工学部 先進機械コース 柳生 裕聖先生
自動車の排ガスには、人体に有害な一酸化炭素が含まれています。本研究では、金属ナノ粒子とセラミクスの複合体を用いた酸化触媒により、一酸化炭素を無害な二酸化炭素に転化したり、エタノールからアルデヒドや酢酸を生成したりする技術の開発に取り組んでいます。
自動車用の酸化触媒には金属ナノ粒子が用いられますが、高性能な触媒を実現するためには粒子径の均一なナノ粒子が必要となります。そのため、微細流路内で溶液を混合する製造法を検討しています。
より転化率の高い酸化触媒を開発して産業界へ提案し、生産活動における環境負荷低減につなげることを目指しています。
高分子材料、流体のシミュレーション技術
理工学部 先進機械コース 柳生 裕聖先生
たとえば、車のタイヤはゴムでできていますが、タイヤが走るときにどのように中のゴムが変形して、どう力を伝えているのかは見た目ではわかりません。そこで、タイヤ用ゴムの内部構造と変形挙動の関係を明らかにするため、ゴム材料の粗視化分子動力学シミュレーション(ゴムの中の分子をコンピューター上でモデルにして、どのように動いているのかをシミュレーションすること)を検討しています。また、微細流路内の流体の挙動(とても細いチューブのような流路の中を液体がどう流れるか)を予測するため、粗視化分子動力学法による流動シミュレーション技術についても検討しています。
粗視化分子動力学法は通常の分子動力学法とは異なり、複数の分子や原子を1つの粒子として扱うことで、原子数の多い高分子や大規模なモデルの動力学を解析できます。しかし、計算プログラムを開発するには機械工学、計算工学の知識やプログラミング技術が必要です。
粗視化分子動力学法の計算プログラムコードを開発し、オープンソースソフトウェアとして一般公開することを目指しています。
3DAモデルの実用化
理工学部 先進機械コース 鈴木 伸哉先生
機械をつくる際、多くの企業では立体的に見える3Dモデルと2次元図面(紙・PDFなどの見取り図)の両方を製作していますが、両方を製作するのには時間やコストがかかります。そのため、3Dモデルの中に2次元図面の情報を盛り込み(“見た目がわかる3D”と“寸法が伝わる2D”をひとつにまとめる)、より早く・正確にモノづくりができることを目指した「3DAモデル」が提唱されていますが、まだ実用性に課題が残っています。そこで、私たちは3DAモデルを実用化するための研究に取り組んでいます。
3Dモデルと2次元図面の両方の運用については多くの企業が負担に感じているものの、本格的な3DAモデルの運用に至っている事例はごく少数です。そこで、業界団体と協力してこの状況の改善に向けた取り組みを進めています。
自動車工業会の分科会に参加し、実用的な3DAモデルの在り方について議論を深め、3DAモデルを制作するソフトウェア会社に機能改善を働きかけているところです。
地中送電線中に発生する水トリー劣化現象の研究
理工学部 電気・電子コース 植原 弘明先生
送電には架空送電と地中送電の2種類があり、架空送電よりも地中送電のほうが地震やゲリラ豪雨等の災害に強いとされています。しかしながら、地中送電線において水と高電界が共存すると水トリー劣化現象が発生し、最終的には絶縁破壊(停電事故)に至ります。水トリーは停電事故原因の3分の1を占めていますが、未だ解決されていない問題です。
省エネ効果を高める方法としてインバータ(直流を交流に変換する技術)が採用されていますが、電圧の著しい上昇や波形の不安定化などの課題があり、これが水トリーの発生・進展に関与している可能性があります。本研究はこうした課題の解決を目指すものです。
インバータ波を使用し、水を共存させた場合の水トリー現象を研究することによって、安定した電気の供給に寄与できると考えています。
酸化ガリウムを中心としたセスキ酸化物の物性予測
理工学部 電気・電子コース 島田 和宏先生
窒化ガリウム(GaN)や炭化シリコン(SiC)に続く次世代のパワー半導体材料として、酸化ガリウム(Ga2O3)が有力視されています。電子デバイスとして活用するには材料の性質をよく知る必要がありますが、酸化ガリウム(Ga2O3)にはまだ不明点が残っています。また、一緒に使われる可能性のあるほかのセスキ酸化物(M2O3の組成の材料)の性質についても未知の部分があります。本研究では、半導体への活用が見込まれる材料の性質を計算機シミュレーションで明らかにすることを目指しています。
次世代の半導体材料となり得る物質の特性を明らかにする研究で、計算機シミュレーションも最先端の研究手法です。この手法で材料を詳しく調べれば、省エネや動作速度向上などの実現に近づき、また性質の異なる物質を組み合わせて新たな物性を引き出すこともできます。
研究テーマとして扱っている酸化ガリウムを中心としたセスキ酸化物の性質を明らかにして、消費電力が少ない高効率な新しい電子デバイスの設計をしていきたいと考えています。
地震時や豪雨時の地盤災害などに関する研究
理工学部 土木・都市防災コース 規矩 大義先生
地震に伴って生じる液状化現象、豪雨のときに起こるがけ崩れ、土砂災害などの発生メカニズムに関する研究をベースに、災害発生箇所の予測、被害の程度の推定、復旧方法や被害を防止または軽減するための対策の考案などに取り組んでいます。地盤の性質や状態を現地で調べる「原位置試験」、模型を使って現象を推定する「模型実験」、コンピュータシミュレーションなどを組み合わせて、国土の防災や減災、災害発生後の復興につながる研究成果を目指しています。
大きな災害が発生すると、それまでと異なる新たな被害形態が生じる可能性があります。都市構造の変化に対応しながら災害によるリスクを拾い上げ、現実的な対策を講じて人々の生命や財産、社会基盤を守る取り組みには、常に最先端の技術が求められます。
人々の安全・安心への意識や要求水準はますます高まっています。地球環境の変化にも対応する必要があり、研究課題は尽きません。工学分野にとどまらず、未来の社会と暮らしを守るための学際的な研究を進めていきます。
AIを活用した災害時の被害推定・防災DX・建設DX
理工学部 土木・都市防災コース 鳥澤 一晃先生
携帯電話の位置情報や交通プローブ(移動体通信システムにより取得されるデータ)をはじめとするビッグデータを活用して大規模災害の被災地域を分析し、道路ネットワーク等のインフラの機能障害を把握。複雑かつ大量の属性情報を考慮し、空間的・時間的な被害や復旧の推移をAIで高精度に予測します。また、人口減少や高齢化が進む中、建設業界ではさらなる省人化や省力化が求められています。カメラを用いた画像認識AIとそれに連動したシステムにより、建設現場の半自動化・全自動化を推進する実践的な技術開発にも取り組んでいます。
土木工学は、災害に対する都市や地域の安全・安心の実現を考え、それを支える社会基盤の構築に携わる分野です。AI・データサイエンスを中心とする情報科学と融合することで、これまでにない革新的な都市防災や建設業のあり方を社会に実装することを目指しています。
急速に発展するAI技術を的確に取り込みながら、実際に自治体や企業で役に立つシステムを構築し、それを社会に広めていきたいと考えています。
機械学習や統計的手法による浸水ハザード評価・予測
理工学部 土木・都市防災コース 福谷 陽先生
津波などの災害に備えたハザードマップ作製や防潮堤建設などの対策を講じるには、陸域での浸水危険性(ハザード)の事前評価が重要です。本研究では、ニューラルネットワーク(脳神経細胞「ニューロン」を模した数理モデルで、主に画像や音声のパターン識別に用いられる)を中心とした機械学習の技術を用いて、津波や高潮の海域・陸域での伝わり方の関係を学習し、学習モデルを通して陸域の浸水分布を即座に得られるようにして浸水予測の効率化を目指しています。機械学習の技術を基盤とした予測手法を確立すれば、実務への円滑な適用も期待できます。
津波の浸水評価では、津波が伝わる物理過程を精緻に表すために、偏微分方程式(現象の変化の仕方を表す数式)による物理モデルを解くのが一般的ですが、膨大な物理モデルを解法するための計算コストが障壁となっていました。これを機械学習の技術を用いて解決していくところは、独創的であり先端的といえます。
本研究の目的は災害リスクの事前評価ですが、災害発生時のリアルタイム予測にも応用可能です。浸水予測が低コスト化、迅速化されれば避難計画や復旧・復興計画の策定に有用な情報が即時に得られ、対策の推進につながります。
複合災害や不確実性・経年劣化に挑む社会基盤構造物
理工学部 土木・都市防災コース 北原 武嗣先生
地震、台風、ゲリラ豪雨、津波、斜面崩壊などの自然災害は、それぞれが単独で起こるだけでなく複合的に発生するケースもあります。本研究では、人々の生活や社会活動に必要不可欠な社会基盤構造物を合理的、そして安全に設計・維持管理することで、複合的な事象にも対応しつつ、地球規模での持続可能性を高めた社会に貢献することを目指しています。自然現象の不確実性だけでなく、構造物の経年変化による環境負荷も考慮した安全性・信頼性の評価を可能とする手法の構築にもつなげていきます。
複雑化・激甚化する自然災害への対処法を見出し、事象をうまく受け流すシステムも考慮している点、不確実性や経年劣化も考慮して確率論的に安全性・信頼性を評価する点が本研究の特徴です。AIやデータサイエンスなどの最新技術をフル活用して課題解決に挑みます。
人々が安全に、安心して暮らせる社会の実現に貢献できる社会基盤構造物、社会基盤システムの構築を目指し、地方公共団体や産業界などとの緊密な連携のもと、未来に向けた学際的な研究につなげていきたいと考えています。
環境配慮型エッチングプロセスの開発
理工学部 表面工学コース 田代 雄彦先生
絶縁材料(プラスチック等)とめっき金属の密着性を高めるために、「とても小さな泡(直径1マイクロメートル未満)」と「オゾン(水をきれいにする力のある気体)」を組み合わせた特別な水「ウルトラファインバブルオゾン水(Fblow®)」を使用した表面粗化(エッチング:表面をうすく削り、金属がしっかりくっつくようにする)のプロセスを開発しています。現在はこの作業に、強力な酸化剤であり有害物質としても知られる「六価クロム(ろっかクロム)」という強い薬品を使用していますが、世界的な環境規制の影響で、今後使用が制限される可能性が極めて高いと考えられています。そこで私たちは、「ABS樹脂(プラスチックの一種)」や「ポリイミドフィルム(熱に強いプラスチック)」などの絶縁材料に対して、より環境にやさしいFblow®処理だけで絶縁材料(プラスチック等)とめっき金属の密着性を高められるようにする研究を進めています。
ABS樹脂の場合、現状のエッチング液では数~十数μmの多数の穴を形成してめっき金属との密着性を確保しますが、本プロセスなら1/100~1/1000の粗さの加工で同等の効果を得られ、樹脂の特性劣化を抑えられます。また使用後の廃液処理などが不要で、環境に優しい加工法といえます。
このプロセスの性能を評価するため、さまざまな絶縁材料への表面粗化(エッチング)の適用を行っていきたいと考えています。また、次のステップでは金属材料への適用も視野に入れています。
マイクロバブルとオゾンによるめっき液再生システム
理工学部 表面工学コース 田代 雄彦先生
めっき(金属のうすい膜を表面に作ること)をするときに使う液体(めっき液)には、「添加剤(てんかざい)」という、めっきの質を良くするための成分が入っています。しかし、この添加剤は時間がたつと壊れてしまい、「分解物」と呼ばれるゴミのようなものが出てしまいます。今までは、何か月かに1回、活性炭でこれらのゴミを取り除く方法が行われてきましたが、このやり方は、「工場の生産を一時的に止めないといけない」「ゴミや大量の洗い水が出てしまう」といった問題がありました。そこで私たちは、「マイクロバブル(とても小さな泡)とオゾン(強い酸化力をもつ気体)」を使った新しい処理方法「OMB(オゾンマイクロバブル)処理」を研究しています。この方法であれば、大事なめっきの主成分には全く影響を与えずに、いらないゴミだけを選択的に分解することができます。さらに、小さくて安いOMB装置を開発して、世界中の工場で使ってもらえるようにしたいと考えています。
開発を進めているのは、廃棄物の排出ゼロで、活性炭処理槽の洗浄水が不要な、環境に優しくサスティナブルなめっき液再生システムです。生産ラインの操業中に処理作業も同時にできるようになるため、休日に出勤する必要がなくなり、作業者への負担も大幅に軽減されます。
この再生システムで処理された有機添加剤の分解物の分析を進めるとともに、OMB処理装置の小型化を検討していく予定です。
半導体用超薄膜作製プロセスの開発(超薄膜制御)
理工学部 表面工学コース 田代 雄彦先生
めっき(金属のうすい膜を表面に作ること)をするときには、様々な理由で不具合(小さなキズやムラなど)が起きてしまうことがあります。しかし、スマートフォンやコンピュータなどに使われる半導体をより高性能にするためには、キズやムラのない、きれいなめっき膜がとても大切になります。そこで私たちは、半導体づくりによく使われる「無電解Ni-Pめっき」という方法に注目して、「なぜ不具合が起きるのか?」という原因をくわしく調べ、「どうすればムラのない、きれいな膜が作れるのか?」という新しい作り方の研究を進めています。より高性能な半導体部品を製造するために、欠陥の発生メカニズムを明確化し、組成的に均質な薄膜で無欠陥のめっき膜を作製するプロセスを検討しています。
現状では、組成的に均質で欠陥のないめっき膜を安定的に作製するプロセスは存在しません。これを実現できれば、半導体産業の発展に大きく貢献できるでしょう。
企業との協力のもと、組成的に均質な薄膜で無欠陥のめっき膜を作製するプロセスの完成を目指して研究を進めていきます。
ループヒートによる機器類の冷却/吸収冷凍サイクル
理工学部 先進機械コース 辻森 淳先生
主にパソコンやスマートフォンなど電子機器の冷却問題、空調機器に用いるエネルギーの問題に取り組んでおり、いずれも熱エネルギーの制御が研究の軸になっています。電子機器の冷却問題を解決に導くのが、「ループヒートパイプ」という電力などを使わずに熱を冷却できる仕組みで、人工衛星の機器の冷却装置として宇宙開発にも応用されています。また、電気を使わず熱エネルギーで室内を冷やす「吸収冷凍サイクル」システムの研究にも力を注いでいます。
電力などを使わずに熱を冷却できるループヒートパイプシステムを活用すれば、これまでの6倍の冷却量、7倍の熱輸送距離を有する熱輸送・冷却デバイスが実現します。また吸収冷凍サイクルを使えば、電力をほとんど使用しない空調機器をつくれます。
機械は動力がなければ動かせません。まだ使われていない熱資源を有効活用し、環境にやさしく持続可能な社会インフラの構築に貢献していきたいと考えています。
構造物の耐風安全性向上/風に関する都市課題の解決
理工学部 土木・都市防災コース 中藤 誠二先生
強風によって橋が損傷したり落下したりする危険を防ぐため、風洞実験(構造物への風の影響を知るために模型を使って行う実験)によって詳細な特性を把握し、事故の発生メカニズムを解明することを目指しています。また日常的に吹く風によって橋の欄干や建物の手すりから生じる風騒音や、橋の上を通る人や車への風の影響についても研究しています。
構造物の周囲の風の流れは非常に複雑で、この流体現象によって起こる構造物の振動や音の発生、物体の運動への影響などについてはまだ解明されていないこともあります。それらを明らかにして設計基準などに反映させれば、より安全で経済的な構造物の実現につながります。
風洞実験で各種センサーや測定装置、測定手法を組み合わせれば、現象をさまざまな指標で把握できるようになります。測定データの精緻化とともに、これまで見落とされていた発生メカニズムの解明にもつながると考えています。
「K-tech」とはSociety5.0を見据えたGX・DXを中心とする社会連携教育のことです
Sociery5.0の中核となる「人間中心」「包摂性」「持続可能性」
という価値観を教育に反映させ、学生がデジタル技術や環境技術を活用して
社会課題を解決する能力を育むことを目指す。
これにより、GXとDXの両輪で、
未来のスマート社会とグリーン社会を担う次世代の人材を育成する。
伝統工芸を未来へつなぐ、空きビル再生プロジェクト
建築・環境学部 建築・環境学科 粕谷 淳司先生
協力・連携企業/
団体等
福井県越前市役所、キリン刃物株式会社、佐々木桐たんす、山崎吉左衛門紙業、有限会社小畑製紙所、中西木材株式会社、福井県立武生商工高校
伝統工芸の文化を未来につなぐため、福井県越前市の空きビルを地域に開かれた交流拠点へと再生するプロジェクトです。地元の人々と協働し設計から制作までを体験する「実践を通じた学び」、建材メーカーの廃材を活用した建築デザインを探究する「持続可能性への取り組み」、CNC加工機「ShopBot」と伝統技術を組み合わせて新たな空間デザインを創出する「最先端デジタル技術と伝統工芸の融合」、地域外から学生や研究者が入ることで地域活性化を促す「地域課題解決と新たな関係人口創出」などが、この活動の特徴であり、目標でもあります。
当研究室では、地域と連携して未来の建築・デザインを実践的に学ぶ機会を継続的に用意しています。「ただ学ぶだけでなく、自らの手で社会を変えていきたい」という志を持った学生たちとともに、こうしたプロジェクトを推進していきたいと考えています。
協力・連携企業/団体等
福井県越前市役所、キリン刃物株式会社、佐々木桐たんす、山崎吉左衛門紙業、有限会社小畑製紙所、中西木材株式会社、福井県立武生商工高校
鉄道斜面の危険度予測と5Gを活用した防災システム
理工学部 土木・都市防災コース 規矩 大義先生
協力・連携企業/
団体等
鉄道関連企業
鉄道の斜面・盛土において地震や雨、風化や劣化による崩壊を防ぐには、定期的な点検が欠かせません。急勾配で狭い斜面では、安全・簡便に必要な情報を得られる調査法とそれに基づく危険度予測が求められており、可動式の貫入試験機(地盤の強さや性質を調べるための機器)とセンサー類を併用した調査法の確立を目指しています。また、危険度が高まった際、接近する列車や司令室にリアルタイム計測と5Gネットワーク上での危険度判定を即座に伝えるシステム開発にも取り組んでいます。学生は研究者として実験室で装置の試作に携わり、鉄道斜面での調査や評価も担当しています。
鉄道の斜面や盛土を点検するための具体的な調査法と危険度予測法、および事故のリスクを予測し乗客・乗員の安全を守る5Gネットワークを活用した防災システムを確立し、その研究成果の実用化を目指して具体的な製品に結びつけたいと考えています。
協力・連携企業/団体等
鉄道関連企業
密漁対策システム開発プロジェクト
情報学部 情報学科 元木 誠先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
協力・連携企業/
団体等
株式会社エアーズ
企業との協働で、自律飛行システムと赤外線カメラを搭載したドローンによる密漁対策システムを開発しています。このシステムは密漁被害の発生エリア、夜間や養殖場などに飛行時刻を設定してドローンを自律飛行させるものです。上空から赤外線画像を撮影して座標情報を記録し、物体検出用の画像認識AIサーバに送ると、物体(人・車・船・ダイバーの泡)を検出し、その位置を特定します。その後、捕捉物体の情報や画像を関係者に送信することで、密漁の抑止や密漁者の早期特定、監視者の安全、監視コスト削減につながるシステムです。
研究室の学生がAIサーバの物体検出モジュール、位置特定モジュールの開発に取り組み、共同研究先の企業とのミーティングに参加して進捗報告をしたり、開発したモジュールを企業と一緒に検証するなど、企業と連携しながら開発を進め,プロトタイプを完成させました。
検証実験には神奈川県立海洋科学高校の協力を得ており、今後は同校と横須賀市、株式会社エアーズ、関東学院大学の産官学が一体となって開発に取り組みます。また、本格運用に向けて横須賀で実証実験を進める予定です。
協力・連携企業/団体等
株式会社エアーズ
画像認識AIを活用した建設廃棄物の種別・重量推定の自動化技術開発
理工学部 土木・都市防災コース 鳥澤 一晃先生
協力・連携企業/
団体等
前田道路株式会社
建設廃棄物のリサイクルを目的とした中間処理施設への搬入時に、現状では作業員が目視で行っている確認作業を画像認識AIで自動化することで、業務の抜本的な省力化・省人化を目指しています。ダンプトラックの荷台をカメラで上から撮影し、AIが建設廃棄物の種別と重量を推定する仕組みで、蓄積したデータを使った学習により、推定結果の正解率が着実に向上してきています。2024年度から6種類の廃棄物に対応したシステムを試験導入し、最終的には工場で受け入れる全ての廃棄物への対応を目標として、AIの推定アルゴリズムの改良を進めています。本プロジェクトを開始した2022年に4年生だった学生が卒業論文として取組み、大学院に進学した後も継続して修士論文の研究として精力的に関わることで、現在試験運用中のシステムに組み込んだAIモデルの基礎的検討の部分を担ってきました。また、AIモデルを構築するには、まず最初に大量のデータを準備する必要がありますが、プロジェクト当初のデータベース作成段階で、作業手順などを教員とともに模索しながら検討し、その後のデータ構築作業を外注する際の作業標準化に対しても多大な貢献をしました。
まずは単一の工場で、廃棄物の種類を限定してAIシステムの構築を進めていますが、将来的には対応できる廃棄物の種類を増やし、複数の工場でシステムの実装を図り全国に展開していきたいと考えています。AIが推定した廃棄物の種別や重量のデータを工場の受付へ送り、伝票を自動発行するシステムの構築も視野に入れており、さらなる業務効率化を目指しています。
協力・連携企業/団体等
前田道路株式会社
夏休み科学実験教室
理工学部 応用化学コース 鎌田 素之先生
協力・連携企業/
団体等
中外製薬株式会社
子どもたちに科学の楽しさを知ってもらおうと、中外製薬と連携して「中外ライフサイエンスパーク横浜」のバイオラボで実施しました。企業のラボなので、大学の研究室と異なり使える薬品や機材などが限られています。そのため参加学生がアイデアを出し合い、どんな実験をすれば中学生にマイクロプラスチック(直径5mm以下のプラスチックごみ)による環境問題を身近に感じてもらえるかを考え、実験内容を決めました。当日は、顕微鏡やピペットなど、中学生にはあまり使う機会のない機器の使用方法を学生が丁寧に指導し、海岸の砂の中に含まれるマイクロプラスチックを観察しました。
今回はウェブサイトを通じて参加者を募集したため、多くの中学校から生徒が参加してくれました。今後は特定の中学校や高校と連携し、時間を長くとったり回数を増やしたりすれば、環境問題についてより深く考えてもらえる機会を提供できると考えています。また、当日の様子を動画などで広く紹介することも検討しています。
協力・連携企業/団体等
中外製薬株式会社
環境に優しい新たな液状化対策および地盤改良材料の開発
理工学部 土木・都市防災コース 規矩 大義先生
協力・連携企業/
団体等
大学、化学メーカー
セメントや石灰などを大量に使わず、自然由来の物質の水和反応(水が化学反応を起こして硬化する過程)によって固体として現れる改良体から、自己修復機能をもつ地盤改良材(空隙充填や液状化対策)の開発を目指しています。学生は研究者の一員として構想、研究計画、実験の実施、結果の検討などすべての段階に関わり、他機関との検討会などにも参加して発表を行っています。
地盤の空隙充填や液状化対策に役立つ環境に配慮した地盤改良材を開発し、研究成果を論文にまとめて発表し、実用化を目指して具体的な製品につなげていきたいと考えています。
協力・連携企業/団体等
大学、化学メーカー
木造伝統構法の構造性能に関する研究
建築・環境学部 建築・環境学科 神戸 渡先生
協力・連携企業/
団体等
株式会社杢巧舎、株式会社悟工房
日本の伝統的な継手の技術「雇い竿車知栓留め仕口」の性能などを把握するために、試験体の組み立てや試験の準備を大工とともに実施。さらに破壊試験を行い、その観察をすることで、より実践的に学びを深めます。これらの体験を通じて、学生たちは地域特有の大工技術を理解しながら研究を進めていきます。
2024年度の試験ではさまざまな検討を行い、条件によってその性能がどのように変化するかを確認しました。今後はさらに研究を進め、誰もが活用しやすい接合方法の具体的な提案を目指します。また、この技術開発は、環境への負荷を抑えた建築技術の発展にもつながると考えています。
協力・連携企業/団体等
株式会社杢巧舎、株式会社悟工房
青空科学実験教室
理工学部 応用化学コース 友野 和哲先生
協力・連携企業/
団体等
NPO法人Aozora Factory
NPO法人Aozora Factoryと連携し、横浜市金沢区の泥亀公園で地域の子どもたちを対象に定期開催している体験型科学実験教室です。また、海の公園、横浜市役所、三井アウトレットパークや関東学院が運営する2つのこども園でも実施実績があります。学生は実験の準備・運営・解説を担当し、子どもたちに科学の面白さを伝える役割を担います。実験内容の企画段階から関わるため、科学コミュニケーション能力の向上にも役立っています。こうした科学実験教室を含む活動で、「第11回 横浜・人・まち・デザイン賞」(地域まちづくり部門)を受賞しました。
今後はさらに多くの地域と連携し、実験教室の開催エリアを拡大していくことを目指しています。また、環境化学や再生可能エネルギーといったテーマを取り入れ、SDGsを意識した教育活動を充実させたいと考えています。そのほかオンライン配信を活用し、より多くの人が参加できる形式での実験教室も検討しています。
協力・連携企業/団体等
NPO法人Aozora Factory
種子繁殖型イチゴの播種管理の最適化プロジェクト
理工学部 生命科学コース 近藤 陽一先生
協力・連携企業/
団体等
いちご園ブルーノ
2025年度に4年生になる卒研生が持ち込んだプロジェクトです。この学生は、卒業後にいちご園を経営する知人の会社(いちご園ブルーノ)への就職が決まっています。その経営者の方と話しをした際に、種子繁殖型イチゴ(種から育てるタイプのイチゴ)における播種(はしゅ)管理(品種の均一性の確保や育苗段階の工夫が重要になる)が課題になっていることを聞き、卒業研究にできないか私に相談してきたところから始まりました。その後、この学生も同席して経営者の方と私で打ち合わせを行い、興味深い内容だったため、卒業研究としてプロジェクトを立ち上げました。
現状、種子の購入先の会社も興味を示しており、研究のために種子を安価で提供してもらえることになっています。この学生が卒業するまでの1年間のプロジェクトですが、いちご園の課題を少しでも解決できるような成果を目指しています。
協力・連携企業/団体等
いちご園ブルーノ
生物学的廃水処理の能力向上による放流水質の安定化
理工学部 生命科学コース 新家 弘也先生
協力・連携企業/
団体等
日産自動車株式会社
日産自動車の追浜工場より廃水処理についての相談を受け、今回のプロジェクトを提案し、共同研究がスタートしました。本プロジェクトでは、廃水処理場の活性汚泥(微生物を含む下水・排水中の泥)に含まれる分解菌を取り出し、酸素に触れさせる実験を行って菌の分解能力を確認していきます。学生はこれらの実験を役割分担し、日産自動車社員とともに「海洋放流水質の安定化及び廃棄物の削減」という目的達成を目指しています。
最終的には現場の「生物学的廃水処理工程の処理能力向上」を目指しています。そのため、有効な菌が見つかった場合のスケールアップを視野に置き、連続的に廃水処理を行った場合に、その処理能力や菌体量がどのように変化するかを調べながら活動を続けていきたいと考えています。
協力・連携企業/団体等
日産自動車株式会社
金属錯体合成の研究
理工学部 生命科学コース 飯田 博一先生
協力・連携企業/
団体等
化学メーカー、染料製造メーカー、発光材料メーカー
有機EL(エレクトロルミネッセンス:発光物質)としてテレビやスマートフォンの画面に利用されているイリジウム錯体(発光性の性質を持つ)やルテニウム錯体(光を吸収してエネルギーを他に伝える性質を持つ)を、マイクロ波照射法という技術を用いて短時間・高収率で合成する手法を開発しています。本プロジェクトでは独自の手法で高純度での合成を実現しており、企業の研究者とのやり取りを通じてさらなる新手法の開発も進めながら、合成した化合物を市場に提供しています。学生は基礎研究として構造解析に携わり、研究成果の学会発表も行っています。学生たちの測定データが高純度品を示すものとして高い評価を受けています。
ルテニウム錯体、コバルト錯体、イリジウム錯体について企業からの合成依頼があり、既に納品して市場で販売されています。より有用な錯体類を合成できるようになれば、関東学院大学ブランドの金属錯体としての販売の可能性もあります。
協力・連携企業/団体等
化学メーカー、染料製造メーカー、発光材料メーカー
医薬品や化粧品の成分として知られる「エステル類」の短時間合成
理工学部 生命科学コース 飯田 博一先生
協力・連携企業/
団体等
精密加工・化学装置メーカー、発光材料メーカー
医薬品や化粧品の成分として知られているエステル類(果物の甘い香りや香水の香りを形成する酸とアルコールが反応してできる物質)を短時間・高収率で合成する手法を、電子レンジに使われるマイクロ波照射技術を活用し研究しています。「いい匂いがするエステルの短時間合成」という本学学生の研究テーマをきっかけに、関心を示した企業への最新実験データの提供がはじまりました。現在は当該企業の研究者と学生が意見交換を行いながら、新たな研究装置の開発を進めています。最新の「フロー合成法+マイクロ波照射」という手法を組み入れた試作機が近日中に完成する予定です。
マイクロ波照射法を用いたエステル合成の可能性は、共同研究先からも理解を得ています。これを「時短技術」に展開する必要があり、さらに共同研究・開発を進めていきます。
協力・連携企業/団体等
精密加工・化学装置メーカー、発光材料メーカー
CVケーブル絶縁体の熱劣化様相の解明
理工学部 電気・電子コース 植原 弘明先生
協力・連携企業/
団体等
一般財団法人電力中央研究所
送電用CVケーブルは電力輸送に不可欠な設備ですが、絶縁体中の水分と局所的な電界集中部の存在に起因して起こる水トリー劣化現象によって絶縁性能が低下します。このため、絶縁体への水分の浸入を抑制する構造(遮水槽)が開発されており、遮水槽を採用したCVケーブルでは未採用の場合よりも長期間の運用が期待されています。その一方で、水トリー以外の劣化現象の顕在化が懸念されます。本研究では熱劣化に着目し、事前に加熱した新品CVケーブル絶縁体の電気的、化学的、機械的特性を測定し、劣化様相や絶縁性能の低下要因を評価します。
現在は電気的特性を測定していますが、今後は化学的特性や機械的特性の測定にシフトしていく予定です。これにより社会インフラとしての「電気」に関わり、電気の安定供給に貢献できると考えています。
協力・連携企業/団体等
一般財団法人電力中央研究所
アートどろ団子教室
理工学部 土木・都市防災コース
山口 恵美先生、福本 佑美先生
協力・連携企業/
団体等
神奈川県民共済、関東学院大学総合研究推進機構
土木・都市防災コースの学生らが学ぶ土木工学はCivil engineering(市民工学)といわれ、私たちが毎日利用する道路や鉄道の線路、上下水道などの社会インフラをはじめとした都市を造り、それらの維持管理を通して災害から市民の命を守るための学問分野です。本イベントは、そうしたあらゆる構造物を支える”土”の性質を学んだり、過去に起きた巨大地震を安全な環境で体験したりすることによって、土木と都市防災の関わりを知ってもらい、ひいては来る南海トラフ地震に備えた防災意識の向上を目的としています。土木系女子学生の会(通称「どぼじょ」)が主体となって2010年から実施しているプロジェクトで、土木の基本的な材料である土(粘土)を使って小学生にカラフルな「どろ団子」づくりを体験してもらっています。最後に磨き上げるとピカピカになることなどから、土の性質についても学んでもらいます。学生が小学生と直接会話をしながら、どうすればきれいに輝く球体になるかを考えられるよう促しています。
イベントの継続的な開催を通して学生が自身の学びや研究成果を社会に還元する機会を提供するとともに、将来、子どもたちに土木工学をはじめとする理工系進路を選択してもらえるよう、学ぶ楽しさを伝えていくことを目的としています。生活の基盤となるあらゆる構造物を支える「土」の性質を知ることで、土木を学ぶきっかけになればと考えています。
協力・連携企業/団体等
神奈川県民共済、関東学院大学総合研究推進機構
キッズ地震教室
理工学部 土木・都市防災コース 大谷 友香先生
協力・連携企業/
団体等
神奈川県民共済
土木・都市防災コースの学生らが学ぶ土木工学はCivil engineering(市民工学)といわれ、私たちが毎日利用する道路や鉄道の線路、上下水道などの社会インフラをはじめとした都市を造り、それらの維持管理を通して災害から市民の命を守るための学問分野です。本イベントは、構造物の揺れについて学んだり、過去に起きた巨大地震を安全な環境で体験したりすることによって、土木と都市防災の関わりを知ってもらい、ひいては来る南海トラフ地震に備えた防災意識の向上を目的としています。サイエンスコミュニケーション活動の一環として小学生に地震時の構造物の揺れについて教えています。画用紙で簡単な工作をして物理現象である共振(振動する物体が外部の振動と同期して、さらに大きく振動すること)について学び、振動台を使った地震体験を通じて正しく恐れることを理解してもらっています。学生は、工作の補助をしながら揺らし方を教えたり、振動台の操作や安全管理をしながら小学生や保護者とコミュニケーションを取って防災意識を高めています。
イベントの継続的な開催を通して学生が自身の学びや研究成果を社会に還元する機会を提供するとともに、将来、子どもたちに土木工学をはじめとする理工系進路を選択してもらえるよう、学ぶ楽しさを伝えていきたいと考えています。また、土木と都市防災の関わりを知ってもらい、来る南海トラフ地震に備え防災意識の向上につなげることを目指しています。
協力・連携企業/団体等
神奈川県民共済
地域防災・減災に関わる自助・共助推進プロジェクト
理工学部 土木・都市防災コース 福谷 陽先生
協力・連携企業/
団体等
横浜市金沢区(キャンパスタウン金沢サポート事業補助金出資者)、まちの減災ナース横浜、はまっ子防災プロジェクト
横浜市金沢区の「キャンパスタウン金沢」(大学の活力を生かしたまちづくり)の枠組みで実施する社会連携教育活動です。学生が主体となり、地域住民や防災の専門家と協働して小学生・中学生への防災教育支援、地域住民との交流会や勉強会などを運営しています。2024年度は金沢区谷津町こども会や横浜市立小田中学校で、災害時の簡易スリッパや段ボールベッドの製作体験、簡易トイレ体験などの各種防災体験活動を、学生が指導役となって実施しました。また、地域住民対象の防災・減災シンポジウムの運営にも携わりました。
金沢区を含む関東地域では、1923年に起こった関東大震災以降、大規模な自然災害が発生しておらず、区民の自然災害への意識がやや薄れてきていると想定されます。そのような中、今後も本活動を継続し、学生が積極的に活動することで、災害発生直後に極めて重要となる「自助」や地域の「共助」の力を高める効果があると考えています。
協力・連携企業/団体等
横浜市金沢区(キャンパスタウン金沢サポート事業補助金出資者)、まちの減災ナース横浜、はまっ子防災プロジェクト
TiO2光触媒シートを用いた新規樹脂改質プロセス
理工学部 表面工学コース 田代 雄彦先生
協力・連携企業/
団体等
東邦チタニウム株式会社
このプロジェクトは、環境にやさしく効率よく樹脂の表面処理プロセスを確立することを目的に行っております。TiO2光触媒懸濁液(二酸化チタンを水に分散させた液体)に紫外線を照射すると、光電効果によりラジカル(対を形成しない不対電子を持つ原子や分子)が発生し、これにより樹脂表面の性質を改良できることが報告されています。しかし、TiO2懸濁液を使用するこの方法では時間が経つとTiO2微粒子が沈降するため、本溶液は廃液として処理していました。そこで、TiO2微粒子をシート状に加工したところ、廃液を排出せずに済み、懸濁液の建浴(処理液を準備する作業)も不要になりました。環境への影響に興味を持つ学部生、大学院生が率先して研究に取り組んでいます。
確認できていないことも多くありますが、光の当たらない影の部分でもラジカルの発生によって樹脂の性質を改良できる可能性があると考えています。また、本法は全く廃液を排出しない環境に優しいプロセスです。
協力・連携企業/団体等
東邦チタニウム株式会社
脳深部刺激療法でのパルス状電気刺激波形の最適設計
情報学部 情報学科 簑 弘幸先生
(2026年4月開設予定※設置届出中)
協力・連携企業/
団体等
Neural Engineering Center, Dept of Biomedical Engineering, Case Western Reserve University, Cleveland, Ohio 44106, USA
生物物理学的に精巧な脳神経回路網モデル(脳の情報処理を再現する仕組み)を用いたコンピュータシミュレーションによって、パーキンソン病の症状改善を目的に行う「脳深部刺激療法」に使われるパルス状電気刺激波形の最適パラメータ(変数)の決定を目指しています。本プロジェクトでは、コンピュータシミュレーションによって得られたデータを学生がグラフに描画し、その傾向を分析して英語で連携先に伝えています。また、学生は国際会議での発表にも挑戦しますが、そこでも連携先の教授と英語で議論しながら国際雑誌への論文掲載に向けた準備を進めていきます。
現在は、パーキンソン病の症状が「あり/なし」の2つの状態において、刺激波形パラメータを決定することに焦点をあてて研究を進めています。患者の症状は常に一定というわけではなく時々刻々と変化しているため、今後は強化学習を用いて、そのような非定常的な症状に対応できる最適な刺激波形の決定を目指していきます。
協力・連携企業/団体等
Neural Engineering Center, Dept of Biomedical Engineering, Case Western Reserve University, Cleveland, Ohio 44106, USA
AIを使った土木構造物の画像解析処理の研究
理工学部 土木・都市防災コース 北原 武嗣先生
協力・連携企業/
団体等
鉄道関連企業
道路や鉄道において重要な課題とされているトンネル内部のクラック(ひび割れや裂け目)の位置や程度を検知するために、動画による画像解析技術とAI技術を活用した共同研究に取り組んでいます。当研究室に所属する学部生や大学院生の関心が高く、卒研生の1人が研究テーマとして携わり、動画撮影条件の検討において実験計画から実験の遂行までを担当する予定です。
研究計画や進捗状況を意識しながら着実に取り組み,その成果を論文発表することを目指しています。さらに、机上での研究だけに留まらず、実構造物の維持管理において実用化につなげるべく検討を深めていきたいと考えています。
協力・連携企業/団体等
鉄道関連企業
橋梁設計・維持管理へのAI・データサイエンスの適用
理工学部 土木・都市防災コース 北原 武嗣先生
協力・連携企業/
団体等
建設コンサルタント企業
ある建築系企業からの相談をきっかけに、橋梁設計の実務に精通した建設コンサルタント企業と関わるようになりました。同社と継続的な協力関係を築く中で、深層学習技術や確率・統計手法などのデータサイエンス技術を橋梁設計や橋梁維持管理に適用する研究を推進しています。当研究室でも特にプログラミングに高い関心を持つ学部生・大学院生が卒業研究・修士研究のテーマとして主体的に携わり、成果を挙げています。
これまでの研究成果を論文として取りまとめ、発表することを直近の目標としています。また、他の実務機関とのコラボレーションの実現についても模索しています。
協力・連携企業/団体等
建設コンサルタント企業